未完の経済システム 2019 10 20
書名 未完の資本主義
著者 大野 和基 PHP
「経済学も資本主義も、完成に近づく」
しかし、それが人類に幸福をもたらすとは限らないかもしれません。
たとえば、完全情報による完全競争になったら、
デフレを引き起こすかもしれません。
昔だったら、テレビを一番安く買うことができたと単純に喜んでいました。
実は、隣の街の電気店で買ったほうが安いのに、
それに気づく手段がなかったのです。
つまり、これは、不完全な情報による不完全な競争でしょう。
今は、インターネットの発達によって、
日本全国で、どの店が一番安いのか、わかってしまうようになりました。
インターネットには「価格比較サイト」というものがあります。
つまり、完全情報による完全競争でしょう。
しかし、これは、小売店にとっては、厳しいと言えるでしょう。
もうひとつ、経済学には変化がありました。
それは、「暗号通貨」の登場です。
多くの人は、「通貨は、中央銀行が発行する」という固定観念がありますが、
歴代の経済学者の中では、
「必ずしも中央銀行が発行するものではない」と考えた経済学者もいるのです。
さて、日本にいると、当然のように銀行口座とクレジットカードを持っていますが、
これが、世界の標準とは限らないのです。
発展途上国に行けば、銀行口座を持っている人は少なく、
さらに、クレジットカードを持っているのは、金持ちだけという国もあるのです。
しかし、スマートフォンだけは、普及した。
そうなると、暗号通貨の出番でしょう。
銀行口座がなく、クレジットカードがなく、
紙幣はあるが偽札が多いうえにインフレが激しい。
そうなると、やはり暗号通貨の出番でしょう。
しかし、「暗号通貨による経済」がどうなるか、全く見えません。
ただし、景気対策のために、大量に紙幣を発行して、
インフレを招く事態は避けられそうです。
暗号通貨には、発行上限があるからです。
少なくとも、経済学は完成させなくてもよいかもしれません。
クラシック音楽に「未完成」があるように。